発振回路の評価方法

新人向けマイコン基礎教育の実習項目を検討
しているのですが、

 通常、発振子を接続している端子に直接プローブ
を当てて発振波形を観測することはしませんね。

 どうしても必要なら、低容量プローブかFET
プローブを使う手が無いではありませんが。

 ホビーユースを口実に普通のプローブを当てて
みました。
 
  ①周波数測定のできるマルチメータ
  ②廉価版のオシロスコープ(60MHz帯域の標準
   プローブ使用)

 発振回路の定数は
   水晶発振子: 仕様 9.8304 [MHz]
   コンデンサ: 22 [pF]
   マイコン: 78K0S/KA1+

  ①では、9.82 [MHz]を観測
  ②では、9.828 [MHz]を観測

 それらしき観測結果は得られましたが、専門家
 の方から見たら、とんでもないことをしている
 のかも知れません。

  ご参考までに、証拠写真添付します。
 アドバイス頂けましたら、幸いです。

ijkutkspBS7oGkcm-1_A0458.jpg

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  • まずはシステムクロックが無いと始まらないので、オシロでチェックは最初に私も実行します。

    通常は採用見込みマイコンを水晶振動子メーカさんに持ち込んで評価してもらい部品を決定することになりますが、費用や時間の問題で実績のあるものがマイコンメーカから提示されるとありがたいところです。水晶振動子メーカさんは負性抵抗、周波数偏差、励振電力、起動時間などを評価するようです。いろいろと水晶振動子メーカさんに問い合わせると具体的な評価方法を聞けると思います。しかし、私も以前にそれらの情報をもとに計測にトライしたことがあるのですが、とても難しいく、かなりの修業が必要そうです。

    ユーザー側はセットコストや精度、立ち上がり時間が気になるところです。ばらつきが数千ppmのセラミックレゾネータで通信などはカバーできるようですが、累積時間計測などはチョット不足します。逆にセラミックレゾネータの起動時間はとても短くかなりのメリットです。起動時間は振動子にのみ依存すると思っていたのですが、以前に\”ルネサスマイコンのEMCノイズ対策と対応\”セミナーでマイコン回路側で起動時間短縮の工夫が紹介されてました。半導体メーカのルネサスエレクトロニクスさんでも、問題なく発振回路の評価ができるようです。周波数偏差や起動時間の参考データが公開されているとありがたいです。先日の\”ノイズ問題(EMC、ESD)に対するルネサスの取組み\”セミナーで情報があったかもしれないので都合がつかずに出かけられなかったのが残念です。
  • kijoさま 

     ご回答有難うございます。

     最近、ハードウェアマニュアルに記載されている
    発振回路関連の情報が少なくなった気がしますね。

     RL78シリーズでは、内蔵発振周波数が±1%まで
    保証されているので、どの様にして実現されている
    のか知りたいのですが、マニュアルを見ても分かり
    ませんね。機密保持の面から仕方ないのかも知れ
    ませんが。

     少なくとも、新人エンジニアにはマイコンの周囲
    の環境変化(温度、電圧など)に対して発振回路が
    どの様な挙動をするか教えられる環境が欲しいです。
  • RX630のサブクロック(XT1,XT2)をオシロで見てみました。
    FFT解析で歪も一緒に見てみましたけど、やっぱりXT1の方がSIN波に近くて、歪んでませんね。

    不思議なことにXT1にアクティブ(FET)プローブをつけると発振が止まってしまうんですけれども、ノーマルプローブをつけると発振を続けてくれました。
    まぁ、入力側のX1やXT1にプローブをつけること自体ご法度なんですけどね。


    それと、最近低消費電力で低CL発振子が流行っているせいか
    特にRL78のサブは振幅が小さいですね。
    XT1が0Vを中心に±0.2Vとかで発振したりするので、
    端子の絶対定格を下回らないように10MΩのフィードバック抵抗を追加して振幅の中心電圧を持ち上げたり、ドライブ電力モードを調整したり色々試行錯誤してます。
    もしかしたら、XT1にプローブを当てているせいで、振幅が0Vを下回っているのかもしれませんが、オシロで見ないとどうなっているか分からないし、困ったもんです。(とりあえず、XT1の波形は見なかったことにしてますけど、、)


               左がRX630のXT1 右がXT2 ↓

    3SDzdGDR60jPPFVm-0_A0459.gif

    gseH8TfmQxx0MiZE-1_A0460.gif

  • ramoth です。

    専門はソフト開発でハードは評価ボートの動作確認で
    見るぐらいですが、場数だけは多いです。

    発振回路は、マイコンに書き込んで単独で動作させても
    うまく動かないときには電源・リセットなどの端子とともに
    最初に確認が必要です。
    そのような場合であれば発振周波数や振幅は厳密な測定
    をするわけではないので、オシロのプローブを当てても
    問題はないと思います。

    発振への影響を小さくするコツとして、できる限り周波数
    帯域が大きいオシロとプローブ(容量成分が小さい)で
    10:1 プローブを使う(これも1:1プローブに比べて回路に
    与える容量成分が小さくなります)のがよいでしょう。

    まあ、正常に発振している状態であれば、オシロのプローブ
    をつないでも発振周波数が微妙にずれることはあっても
    発振が不安定や停止することはないはずです。
    (もし発振がおかしくなるようなら水晶・回路定数が
    不適切な可能性があります。)
    それに、別の信号とショートしたりしない限りCPUや発振子
    が壊れることもないはずです。

    あともう一点、オシロをつなぐ信号はCPUのマニュアル
    の発振子接続端子の等価回路を参照して、インバータの
    出力側になっている端子の波形をとったほうが、発振回路
    への影響が小さくなります。
    (インバータの入力側のコンデンサは周波数微調整のため
    可変コンデンサにすることもあるので、プローブ接続時の
    発振周波数への影響が大きくなります。)





  • おはようございます。
    ramoth です。

    >少なくとも、新人エンジニアにはマイコンの周囲
    の環境変化(温度、電圧など)に対して発振回路が
    どの様な挙動をするか教えられる環境が欲しいです。

    発振周波数の誤差で最大の要因は、水晶振動子の
    温度特性です。
    特に、サブクロック(32.768kHz)を使ったRTCの場合、
    温度特性による発振周波数誤差が、時間誤差として出る
    のでわかりやすです。
    水晶振動子の温度特性は、水晶の物理特性に由来するので
    メーカーによる差はほとんどないと思います。

    温度特性の傾向がわかりやすい図が、下記の発振子メーカの
    Webページに有りました。

    http://cfm.citizen.co.jp/product/cvo_character.html

    外付けの発振器で精度のよいものでは、温度センサを内蔵して
    補償を行ってます。
    それと同様のことをCPUのソフトで実現したアプリケーション
    ノートがあったので、紹介しておきます。

    アプリケーションノート
    http://documentation.renesas.com/doc/products/mpumcu/apn/rx/r01an1204jj0100_rx210.pdf

    ソースファイル
    http://japan.renesas.com/support/downloads/download_results/C1000000-C9999999/mpumcu/rx/an_r01an1204jj_rx210_rtc.jsp

  • Kirinさん、ramothさん

      久しぶりのスレッド展開がなされて
     おり、感激です。

      アドバイス有難うございます。
     
      最近、水晶発振子に代わって、
     セラロックを使い始めているのですが
     評価進展したらスレッド投稿します。

  • ramothさん、魚返如水さんこんにちは。

    私の専門は回路設計です。
    ソフトはハード評価の範疇でやっていますけど、
    最近のマイコンは高性能になった分、USBとかFlexRayとかEther-netとか難しい周辺機能が増えて評価がやっかいですね。
    デジタル3年アナログ10年っていいますけど、ほんとそう思います。気がつけば三十路に突入していました。
    アナログの世界は部品のバラつきをどう管理するかが手腕の見せ所なのでデータシートに書いてないことは自分で調べるがモットーです。
    At my own risk!


    ramothさんはソフト屋さんなのにハードについてもすごい情報通ですよね。
    社内でも分からないことはramothさんに聞けば色々解決しそうで、
    社内の皆さんからも慕われているんじゃないでしょうか。
    教えていただいた情報を元にもうちょっとサブ発振を見てみます。


    魚返如水さん
    電源回路や発振子はデジタル技術者には少しハードルが高いんですよね。発振子よりも発振器の方が人気高いですし。
    通信系は高精度なクロックを要求されることが多いので、みなさんにもぜひ発振回路を好きになってもらいたいです。

    これからもよろしくお願いします。
  • 魚返如水さん

     一般に水晶振動子やセラミック発振子などの固体振動子とインバータを使った発振器では、つける容量値が大きくなると
    発振周波数が下がります。

     直接振動子に10pFのプローブをつけると、そのために周波数が変わってしまします。モニタ用の出力ピンがあればいいのですがーーー。

     私は100円ショップの時計があまりに進むので、中をあけて
    振動子の片方にえいっと5pFをつけたら、妙に正確になって喜んでいます。夏になるとどうなるか楽しみです。

    ブレンド
  • RL78/G13のサブクロックのI/O特性を
    ハンディテスターを使って調べてみました。

    マイコン側のドライブ能力が分かれば、
    水晶のデータシートと見比べて部品選定できそうです。
    でも結果的には、通常発振も超低消費発振もドライブ能力の違いは少ないですね。


    ■条件 VDD=3.3V ボード:QB-R5F100LE-TB 28℃ 45%Rh

    ・通常発振ドライブ能力= 0.33uW
     {AMPHS1\,AMPHS0}={0\,1}で
     XT1=GND印加時のXT2-GND電流は0.45uA\,XT2の電圧は0.73V

    ・低消費発振ドライブ能力= 0.23uW
     {AMPHS1\,AMPHS0}={0\,0}で
     XT1=GND印加時のXT2-GND電流は0.33uA\,XT2の電圧は0.71V

    ・超低消費発振ドライブ能力= 0.15uW
     {AMPHS1\,AMPHS0}={1\,0}で
     XT1=GND印加時のXT2-GND電流は0.22uA\,XT2の電圧は0.68V


    ・チップ内蔵XT2-XT1帰還抵抗= 37MΩ
     XT1-GND間の電流値は0.02uA、この時XT2の
     電圧は0.73Vだったので、0.73V/0.02uA=37MΩ
     テスターだとさすがにサブuA以下は計れないので、
     暖まるまで何十分も掛かる高級?な電流計を持ち出してきました
     でも、ほとんどノイズレベルで、ちょっとの測定誤差で
     フィードバック抵抗の計算も大きく変わるので目安ですね。


    ということで、オシロで見たときXT1の振幅の中間点が電源の1/2ではなかった原因は、
    XT1にオシロのプローブをつなぐと1MΩのプルダウン抵抗に見えるので、XT1のブリーダ抵抗的にチップ内蔵フィードバック抵抗37MΩとの分圧になり、振幅の中間点が0V付近まで下がってしまうことが分かりました。

    XT1を見たつもりの、この波形は嘘ということですね。(すっきり!)

    t9kzptkZXhWPx1Oc_A0461.gif

  • サブ発振に使用できる水晶の絞込み方法の紹介です。

    まず、マイコンの発振回路(インバーター)のドライブ能力は
    前の投稿で調べた値を使います。
    RL78/G13超低消費モード 0.15uW (I=0.22uA\,V=0.68V)

    水晶のスペックを以下のように表現します。
     ・直列等価抵抗=ESR [Ω]
     ・励振レベル=Dl [uW]

    一般的な指標として、発振余裕度5倍で考え
    負性抵抗を「5*ESR」とすると
    発振条件は以下の式になります。
     Dl*((ESR+5*ESR)/ESR)≦ドライブ能力=0.15uW
     Dl≦0.15/6[uW]
     Dl≦0.025[uW]

    ということで、カタログスペックで励振レベルDl=0.025[uW]以下の水晶を選択すればOKになります。


    仮に、セイコーのサブ発振子「VT-200-FL」(Dl=0.01uW\,ESR=50KΩ)を使った時に発振余裕度nが何倍になるかを計算すると
     0.01uW*((ESR+n*ESR)/ESR) = 0.15uW
     n=0.15uW/0.01uW-1=14倍
    よって発振余裕度は14倍になります。


    それでは、答え合わせ。
    手近なところで、北斗のボードHSB78G13-64Bでのマッチング結果を見ましょう。

    > http://www.hokutodenshi.co.jp/7/HSB78G13_64B.htm
    > ↑の「サブクロック特性評価証明書:PDF 更新(2013.1.17) 」をクリック

    超低消費発振モードの結果を確認すると、

    > 負性抵抗:-RL=-677KΩ、直列等価抵抗50KΩ
    > 発振余裕度:M=13.5倍

    となっていますから、机上計算とほぼ一致しますね!



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    おまけで、負荷容量と水晶の等価抵抗を考えると

    単純にXT2電流=0.22uAで駆動できるXT2の容量を計算してみます。
      I=Qf=CVf、C=I/(Vf)
      C=0.22uA/(0.68V*32.768KHz)=9.9pF
    XT2≦9.9pF以下なら、V=0.68Vまでフルスイングできそうです。

    水晶の直列等価抵抗ESRの影響は、単純に考えて
      R=V/I=0.68V/0.22uA=3.1MΩ
    なので、水晶のESR(負性抵抗分も含めて)が3.1MΩを超えると水晶起因で電流制限が起こり、ドライブが「0.15uW」以下になってしまいそうですね。