デジタル化により進む、高解像度・高機能化

監視カメラの世界は、デジタル化が進んだことで数年前と比べて大きく様変わりした。まず、解像度が高まった。従来は、640×480といった「SD(標準)」解像度が主流だったが、今では1,280×800や1,920×1,080などの解像度が一般的になり、中には「4K(3,840×2,160)」などの高解像度に対応する製品もある。もう一つの大きな変化は、映像符号化(圧縮)技術の進歩により、カメラと録画機の間がIPネットワークを介して接続可能になったことだ。

実は、高解像化とネットワーク化は同期している。以前は、動画を扱う機材のほとんどは、放送規格に準拠していた。そのため、放送に使われるアナログ信号(解像度480×3450程度であるNTSC信号など)が伝送に使われ、この信号をデジタル化した640×480程度の画素数が監視カメラの標準的な解像度となっていた。ところが圧縮技術が進み、IPネットワークに動画像を流せるまで圧縮できるようになったことで、高解像度化が進んだのだ。

ネットワークに対応した監視カメラは、IPカメラやネットワークカメラとも呼ばれ、普及が進んでいる(図1)。また、利便性を重視する家庭用(ペットの見張りなど)では、無線LANによるワイヤレス技術も活用されている。

 

図1:監視カメラの国内市場推移、2012年にIPカメラ(デジタル)がアナログカメラのシェアを上回った

出典:富士経済グループお役立ち情報 月刊『FK通信』

http://www.group.fuji-keizai.co.jp/mgz/mg1402/1402m2.html

 

監視カメラがデジタル化され、PCまたは専用機に搭載したハードディスクに記録するようになったことで、録画機のテープ寿命や巻き込み等を心配する必要が無くなった。巻き戻しやコマ送りも簡単に行え、後から画像をチェックすることも容易だ。利便性が大いに高まった。

カメラから録画機までの結線にIPネットワークが使えるため、ケーブルが簡略化された。アナログ時代は、カメラと録画機が1対1でつながっていたため、録画機の裏の多数の端子から何本ものケーブルが伸び、建物内を多くのケーブルが這いまわっていることも珍しくなかった。監視カメラシステムの構築は、デジタル化で格段容易になった。

機能面に目を向ければ、監視カメラをつないだネットワークにセンサを組み合わせたり、インターネットを介したリモートアクセスを可能にしたり、人物の検出機能を強化するなどの高機能化が進んでいる。

今後は、ますます知能化に向かうことが予想されている。例えば、ビデオ・アナリティックスと呼ばれる映像解析技術を導入し、目的のシーン(状況)のみを見つけ出す機能が強化されるだろう。アナログ時代も「動くものがあれば録画を開始する」といった機能はあったが、部屋のカーテンが動いても録画してしまっていた。現在は、「建物の塀を越えようとしている」といった、特定の行動を「見抜く」技術開発が盛んだ。

 

監視カメラが求める「マイコン」とは?

ネットワーク化された監視カメラには、撮像素子とのインターフェース(カメラ・インターフェース)や画像符号化回路といった、これまでの産業用マイコンとは若干異なった機能を搭載するマイコンが求められる。IPネットワークを利用するので、Ethernetとのインターフェースも欠かせない。SD/MMCインターフェースやUSBインターフェースも、メンテナンス時に必要になるだろう。

映像符号化(圧縮)技術は、一般的にMPEGやモーションJPEGといった国際標準方式が使われている。動きの記録が重要なアプリケーションでは、動画用の圧縮方式であるMPEGの利用が多い。しかし、MPEGはフレーム数が低い場合は圧縮効果を高めにくい。MPEGでは、前後のフレームの情報を使って画像を作る場合があり、フレーム間で変化が大きいと情報をうまく使えないからだ。

一方のモーションJPEGは、1枚毎に映像に関する情報が完結しているのでフレーム数が低い場合に好まれる。解像度は必要だが高いフレーム数は求めない、といった用途ではJPEGの利用が目立つ。

前述のビデオ・アナリティックスは、カメラ側では前処理程度で、録画機側で本格的な処理を行うことが多い。カメラで全処理を行うと、他の用途で映像を使いにくいこともあるからだ。カメラ側で全てを処理することが求められているのではないことに注目したい。監視カメラに求められるのは「分析のための良好な情報を得る」事だ。そのために、シャッター速度と絞りの調整だけでは対応しきれない場合でも、破綻ない映像を得るためのフィルタ処理を行う。例えば、自動車のヘッドライトで直射されても、映像が真っ白で確認できなくなることを防ぐダイナミックレンジ処理などだ。必要な処理に合わせて、マイコンには一定の演算能力が必要となる。

人物検出や認識の機能も同じだ。監視カメラが人間の顔を検出後、認識まで行い、人物を特定する必要は無い。このような認識作業は、大きなデータベースを持った録画機側で行う。それよりも、顔をしっかりと見つけ出し、特徴量と呼ばれる認識に必要な情報を取り出しやすくする事が重要だ。

監視カメラはデジタル化、そして、ネットワーク化により大きく進化した。今後は、さらにデジタル処理を活かした、新たな用途が生み出されることだろう。それを支えるのは、用途に合わせた十分な性能と機能を有するマイコンだ。

 

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